【アーティストインタビュー|陶音】見たことのない景色を、タイルでつくる


2026.09.14

2026年10月17日(土)からKURUTO(  )にて開催されるTOON / 陶音による「decoration」。本展に先立ち、制作背景やおふたりがタイルにいきついた経緯など、自然に囲まれたアトリエにお邪魔してインタビューさせていただきました。

2026年10月17日(土)から31日(土)まで、KURUTO(  )でTOON / 陶音による展示「decoration」を開催します。

陶音は、山田由起子さんと菊地幸未さん、おふたりによる制作ユニットです。2014年に陶音としての活動をはじめられ、現在は、タイルを中心に、建物や空間と関わるものづくりをされています。

今回の展示で向き合うのは、タイルの持つさまざまな可能性です。

当初は「建材かアートか」というタイトルだったのですが、おふたりが話し合う中でたどり着いたのが、「decoration」という言葉でした。

なくても暮らせるけれど、あることで心が動く。自分のために、その場所のために選ぶ「装飾」の豊かさを、タイルを通して体感していただける展示となりそうです。

今回は、自然に囲まれたアトリエにお邪魔し、KURUTOでの展示について、タイルに行き着いたきっかけ、二人でつくることの面白さ、そして「自分たちが見たことのない景色が見たい」という、これからのものづくりについてお話をうかがいました。

――まず、陶音さんについて教えてください。陶音としての活動は、どのようにして始まったのでしょうか?

山田さん 陶音として活動をはじめたのは2014年くらいです。私たちはもともと、二人とも陶芸を専門にやってはいませんでした。私は内装デザインをする会社で事務として働いていたんですけど、カメラマンである義理の父が趣味で陶芸教室を始めたことをきっかけに、その教室を手伝うようになって。そこでゆきみちゃんと出会いました。

菊地さん 私は当時、写真や映像の仕事をしていて、ゆきさんの義理のお父さんのアシスタントとして働いていました。撮影もしつつ、陶芸もやって…という期間が1、2年くらいあって。

だんだん「なんかやれるんちゃうか」ってなってきて、「陶音」という名前で販売できるものをつくってみようと始めたのが、私たちの制作活動のはじまりでした。

――そのときから、タイルをつくっていたんですか?

山田さん 最初はブローチをつくるワークショップなどをしていました。でも、参加者の方に土からつくってもらって、私たちが持って帰って乾燥させて、色をつけて焼いて、お渡しするとなると、1ヶ月以上かかってしまって。「その日に持って帰ってもらえるワークショップができないかな」と考えた時にいきついたのが「タイル」でした。

菊地さん サンプルをつくってみたら、二人とも楽しすぎて。「あれ、タイルか?!」ってなって(笑)。めちゃくちゃ楽しかったんですよね。

――器ではなく、タイルだからこそ感じた面白さはどんなところにありますか?

山田さん 器はひとつのものとして完結するけど、タイルは組み合わせられるんです。土も変えられるし、温度も、焼き方も、釉薬も変えられる。それを隣り合わせにすることで、色の世界や形の世界をつくることができるんです。窯に入らないような大きな作品でも、つなげていけばどんどん大きくできる。そこがすごく面白くて。

菊地さん 器やったら、その器の中で完結するしかないけど、タイルならいろんなものの垣根を越えられるんですよね。角の表情や、釉薬が流れたところ、焼き上がりの揺らぎも、タイルだからこそ見せられるものがある。そういうところが、すごく楽しいんです。

――お二人にとって「陶音らしさ」とは、どんなところにあるのでしょう。

山田さん 新しいものを生み出したい、という欲求は強いと思います。誰もやっていなさそうなことをやりたい。

菊地さん そうね。たぶん根底に、「自分たちが見たことのない景色が見たい」という気持ちがあるんだと思います。「こういうのやってみよう」、「こんなん作ってみたい」と思うのは、自分たちが一番それを見たいから。思い描いたものを実際のものにして、目の当たりにしてみたい。やってみないとわからないことも多いので、トライアンドエラーでやっています。失敗も多いですけど。

――お二人でつくるからこそ、挑戦できることもありそうですね。

菊地さん セッションしながらつくることで、自分だけが思っているものより、もう一歩先に行っている気がします。

山田さん もちろん、意見が違うこともあります。でも、二人とも「いいものをつくりたい」というところは一緒だから。相手の意見を聞いて、「ここはわかるな。でも、こうちゃう?」って、お互いに詰めていくんです。

菊地さん 時には、どっちかがしつこく言っていたら、「一回やってみよう!」となることもあります。言葉だけでは理解できないことも多いから、実際にやってみる。そうすると、「意外といいやん!」となることもある。それも、陶音らしさなのかもしれません。

――今回、KURUTOでの展示を引き受けてくださったのは、どんなところに興味を持っていただいたからでしょうか? 

山田さん 設計事務所が運営されているギャラリーということで、タイルも建物との関わりがとても深いので、何か新しい展示の仕方ができるんじゃないかなと思ったのが大きかったです。また、KURUTO(  )に来たときに、無機質な空間で、それがすごく魅力的に感じました。

菊地さん スタッフの方たちがKURUTOという場所をつくることにすごく熱意を持っていて、それも伝わってきました。「これから始まる場所」で、選んでもらったというのも嬉しかったし、一緒にやりたいなと思ったんです。やっぱり、自分たちだけで発案して展示するよりも、ギャラリー側も一緒に盛り上がってくれたほうが、より熱いものができると思うんですよね。

タイルは陶器であるけれど、建物を意識したものでもあるので、建築設計事務所としてのKURUの周りの方々にも、興味を持ってもらえたらいいなと思いました。

――展示のタイトルを「decoration」としていただきました。タイトルに込めた想いを教えてください。

山田さん このタイトルにいきつくまでには、「建材かアートか」というタイトルにしようと思っていました。最近、建物へ施工させてもらう機会が増えてきて、タイルには、建材としての側面も、アートとしての側面もあるんだなと感じるようになったんですね。

菊地さん でもそこからふたりでたくさん話して、展示内容も考えていく中で、「装飾」という言葉がしっくりきたんです。

山田さん 装飾って、なくても生活できるものだからこそ、すごく贅沢なものでもあると思うんです。でも、その贅沢は、誰かに見せるためだけじゃなくて、自分自身が心地よく過ごすためのものでもある。だから、もっと自由に装飾を楽しんでもらいたい。その人が「これが好き」と思えるものを、その場所のために選んで、つくっていく。そういう装飾の豊かさを、今回の展示で感じてもらえたらと思っています。

菊地さん タイルは建材として空間に寄り添うこともできるし、装飾として彩りや奥行きを与えることもできる。今回は、建材、装飾、アート、住まいってなんだろう、といったようないろんな可能性も想像してもらえたら嬉しいです。

――最後に、今回KURUTOでの展示に来てくださる方に、どんなふうに楽しんでもらいたいですか?

菊地さん 一緒に見て、楽しんだり、考えたり、感じたりできたらいいなと思っています。タイルを見て、「自分の家だったらどうかな」、「こんな使い方があるんじゃない?」と想像してもらってもいいかもしれないですね。実際にタイルを建物に使えるというのが、私たちの強みでもあるので、そこから別の建物や、自分の暮らしに意識が飛んでいったら面白いなと思います。

あとは、KURU、KURUTOのまわりの建築やデザイン、インテリアに関わる方が、「こんなタイルの使い方知らんぞ」とワクワクしてくれたり、面白がってくれたらいいですね。

山田さん 私たちの想像を超えるようなことを、誰かが想像してくれるかもしれない。それを、私たち自身も楽しみにしています。

陶音さんのアトリエは、豊かな自然に囲まれた場所にありました。おふたりで試行錯誤しながらアトリエを改装し、そこで日々タイルや作品づくりに向き合われています。

今回アトリエにお邪魔して、柔らかなおふたりの雰囲気と、制作に向き合う真剣な姿、そのどちらも見せていただきました。

「次はこんなことをやってみたい」と、まだ見ぬものへ向かって試行錯誤を続ける探求心。そして、「一度きりの人生で、まだまだやりたいことがある」とお話しされていたことも、とても印象に残っています。

そんな陶音さんがつくるタイルには、手仕事だからこそ生まれる豊かな表情と、その場所や使う人を思い描きながらつくられる装飾の美しさがあります。

まだ見たことのない景色を、陶音さんと、そして皆さまと見られることを楽しみにしています。

TOON「decoration」

装飾は
きらびやかに飾り立てたり
色とりどりにするだけじゃない。
落ちついた中に、
微かな高鳴りやときめきを感じるもの。
規則的であっても不規則であっても、
そこに配慮や意思を感じられるもの。
その場所のためだけに施される
とても特別なもの。

タイルは
建材として空間に寄り添いつつ
装飾としても自由に彩りや奥行きを
与えることができる。
静でもあり動にもなりえる
タイルの力。
既存のタイルの概念を超えて、
もっともっと自由でありたい。 
装飾という、贅沢で自由で豊かな行為を
存分に体感してもらいたい。

今回のKURUTOでの展示では、
そんな私たちのタイルの片鱗を
垣間見ていただけるものとなっています。 
ぜひ近くで見て、実際に手で触れてみてください。
そして遠くから見て、空間とともにあるタイルを
感じてみてください。
建材とは?装飾とは?アートとは?住まいとは?
いろんな可能性を想像していただけたら、
とても嬉しいです。 

TOON

詳細

日時:2026年10月17日(土)~31日(土)13:00~19:00  
場所:KURUTO(  )
住所:大阪府大阪市西区南堀江4-25-D-103
   Osaka Metroドーム前千代崎駅より徒歩7分/大阪環状線大正駅より徒歩12分
協賛:かなで創新開発株式会社、LAUGH Co., Ltd.
協力会社:MAKE.

※10月25日(日)はお休みです。
※陶音さんの在廊日は、10月17日(土)、18日(日)、31日(土)を予定しています。

ワークショップ開催について

展示最終日の10月31日(土)には、陶音さんが一つひとつ愛情を込めて制作したタイルを使い、自分だけのオリジナルスツールを仕上げるワークショップを開催します!

今回タイルを貼っていただくスツールは、KURUがオリジナルで設計したもの。
私たちがデザインしたスツールを、大阪・玉川にあるモノづくり×ことづくりコミュニティ「MAKE.」さんにカタチにしていただきました。

※スツールは全7種類ご用意しています。当日は抽選で決めた順番に、7種類の中からお好きなデザインをお選びいただきます。数に限りがあるため、ご希望のデザインが選べない場合もございます。あらかじめご了承ください。

また、ワークショップの合間には、これまでKURUTOのイベントにも出店いただいた、私たちも大好きなツブコショクドウさんのお弁当と、miya bakeさんのおやつもご用意する予定です。

陶音のおふたりと一緒にタイルを選び、手を動かしながら、自分だけのスツールをつくる特別な一日。
ものづくりを楽しむのはもちろん、その日に集まった方々との交流も楽しんでいただけたら嬉しいです。
ぜひご参加ください!

日時:2026年 10月31日 (土) 10:00~17:00
場所:KURUTO(  )
料金:20,900円(税込)※当日受付時にお支払いください。支払い方法は現金/Paypayです。
人数:先着13名さま ※定員に達し次第、受付を終了します 

ワークショップの詳細はKURUTOのInstagramにて9月16日(水)にお知らせする予定です。
ご予約は9月17日(木)21:00よりKURUのPeatixにて開始しますので、ぜひフォローいただきお待ちください。

陶音プロフィール

TOON / 陶 音

2005年 陶芸教室陶音/toon(トーオン)として誕生。
2014年 山田由起子と菊地幸未によって制作部門がスタートする。
2016年 ワークショップの依頼が増えるようになり、その日に持ち帰ってもらえる陶器のワークショップを模索していたところ、タイルに行き着く。
手製でしか生まれない形や色の組み合わせに魅了され、次第にアート作品や建材としてのタイルの可能性を追求しはじめる。
2018年 器の初個展。同年、建物へのタイル施工をはじめる。
その後、個展を毎年開催。
2025年 タイルアートのみの個展をiTohenで開催。

■タイル施工事例 / 建物
2018年 大阪市内美容室[atomic]エントランス、大阪市中津[キタの北ナガヤshiten]エントランス
2020年 個人宅エントランス、大阪市天王寺[スタンダードブックストア]キッチン、オーダータイル鏡各種
2021年 個人宅洗面数箇所、西宮市雑貨喫茶店[ありまま]洗面、大阪府能勢町[TO GO BOOKS Nomadik] 洗面
    大阪市中津[みそ汁食堂みそら]店内客席壁面、オーダータイル鏡各種
2022年 箕面市飲食店[curry punk]カウンター、大阪市大正区[cafeコメイチ]外装タイル
2023年 個人宅多数(キッチン、洗面)
2024年 大阪市[デザイン会社 美濃企画]エントランス洗面、個人宅多数(キッチン、玄関、洗面、アート、家具)
2025年 明石モデルハウス[大塚工務店]暖炉背面、洗面 

■受賞歴
2026年 KAIKA TOKYO AWARD2026 入選

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