【アーティストインタビュー|田川舞】土と火がつくる、一つひとつの表情。


2026.09.03

繊細なかたちと野生味も感じられる色合い。自分の心に正直であることを大切に、偶然を楽しみながら作り続けている陶芸家・田川舞さんに聞きました。

2026年9月12日(土)から26日(土)まで、KURUTO( )にて、陶芸家・田川舞さんの個展を開催します。

今回並ぶのは、お米の籾殻と一緒に焼く「炭化焼成」によって仕上げた器と、有機的なかたちが印象的な花器。器約120点、花器約15点を展示・販売する予定です。

一枚の器の中に、青や緑、黄色、赤、銀色、黒がゆるやかに混ざり合う田川さんの作品。同じ土でつくっても、窯の中の場所や焼く回数によって、一つひとつ違う表情が生まれます。

展示に先立ち、陶芸との出会いや制作の時間、作品に込めている思いについてお話をうかがいました。

―まず、田川さんが陶芸を始めたきっかけを教えてください。

最初から陶芸家になりたいと思っていたわけではないんです。高校生の頃は漫画の模写や似顔絵を描くことが好きで、美術大学に進みたいと考えていました。もともとはデザインやテキスタイルに興味があったのですが、受験をきっかけに工芸へ進み、多摩美術大学で金属、ガラス、陶芸の三つを学びました。

金属は、少し直したいと思っても型からつくり直す必要がありました。ガラスは吹きガラスなど、一人ではできない作業が多くて。思い立った時にすぐつくれて、途中でも直せる。その点が自分には合っていると感じ、陶芸を選びました。

最初から一直線に目指したというより、「これは好き」「これは少し違う」と選んでいった先に、陶芸があったという感覚です。

―制作の中で、大切にしていることはありますか。

少しでも「うん?」と違和感があったら、そのまま進まないことです。ろくろをひいている途中で厚みが気になったら土に戻しますし、削っている時に「これは直せないな」と感じたら、壊してつくり直します。

以前は、違和感があるまま完成させたものを店頭に出すこともありました。でも、その作品を見るたびに自分の中に引っかかりが残ってしまって。今は、なるべく自分がいいと思えるものだけを出すようにしています。その方が、気持ちよく次の制作へ進めるんです。

―作品からはストイックな空気感も感じます。制作中は、どんな気持ちなのでしょうか。

頑張ろうと思ってつくっている感覚は、あまりないかもしれません。ろくろをひく時は、ほとんど無心です。

花器にヘラで模様をつけ終わった時の「ああ、できた」という感覚や、窯を開けて、思ってもいなかった色に出会えた時の嬉しさ。その瞬間のためにつくっているような気がします。

学生の頃からずっと、その時の自分が一番きれいだと思うかたちを目指しています。考えていることはあまり変わっていませんが、続ける中で、少しずつ技術が追いついてきたのかなと思います。

―田川さんの器は、一枚の中にいろいろな色が見えるところも魅力的です。

学生の頃は、両親が使っていた信楽焼のマグカップをきっかけに、信楽の土に惹かれていました。今は岐阜・美濃の土を使った炭化焼成を中心に、種子島の土と白い土を混ぜるなど、いろいろな組み合わせを試しています。

釉薬をかけた器も好きなのですが、釉薬は比較的、色や質感が一定になります。炭化焼成は、籾殻の量や窯の中で置く場所、焼く回数によって、毎回違う表情が出てくる。最近は、その予想できなさへの好奇心の方が大きくなっています。

一度焼いた器をもう一度焼くと、銀色のようになったり、赤が出たりすることもあります。今好きなのは、うっすら青みのある緑に、中心が黄色くなる色です。でも、十回焼いて一枚出るかどうか。思い通りにならないからこそ、次はどうなるだろうと楽しみになります。

―器と一緒に展示される、花器についても教えてください。

大学時代に、授業でオブジェをつくったことが始まりです。卒業後に、好きだった造形をもう一度つくりたいと思い、花器として使えるかたちにして、今までつくり続けてきました。

花器は、いつも即興でつくっています。スケッチを見ながらつくったこともあるのですが、絵の時点ですでに完成しているように感じて、そこから粘土で同じものをつくるのが少し窮屈だったんです。

何も決めず、つくりながらかたちを考えて、違うと思ったらその都度直す。その方が、生き生きとしたものになる気がします。造形的なものをつくりたい日は花器を、器をつくりたい日は器を。その日の気分で行き来しています。

―作品を手に取る方には、どんなふうに楽しんでもらいたいですか。

器には料理がのることを意識しています。私自身も、普段の食事ではほとんど自分の器を使っています。料理を盛りつけた時に似合うかな、使いやすいかな、と考えながらつくることが多いです。

それと、一つの器の中にいろいろな表情があるので、眺めながら「こんな色も出るんだ」と楽しんでもらえたら嬉しいです。私が窯から出した時に感じる驚きを、使う方にも感じてもらえたらと思います。器には料理がのることを意識しています。

―これからつくってみたいものはありますか。

いつか、白くてつるつるした、とてもシンプルな器をつくってみたいです。これまであまりつくってこなかったので、自分がつくったらどんなものになるのか気になっています。

器も花器も、これからもどちらもつくり続けたいです。十年後に今の作品を見て、「この頃はまだまだだったな」と思えるくらい、少しずつ技術を高めていきたいですね。

お話を聞く中で、田川さんが何度も大切にしていたのは、自分の感覚に素直でいることでした。少しの違和感も見過ごさず、その時にきれいだと思うかたちを丁寧につくる。一方で、土と火が生む偶然は、面白がって受け止める。

整えられたかたちの中に、同じものが二つとない色が広がるのは、そんな田川さんのものづくりが表れているからかもしれません。

今回の個展では、器と花器が並びます。ぜひ一つひとつを見比べながら、お気に入りのかたちや色を探してみてください。

展示詳細

田川舞
1995年神奈川県横浜市出身。
2019年多摩美術大学美術学部工芸学科陶専攻卒業。卒業後より作家活動を始め、2025年より神奈川県横浜市にて作陶。
土の質感や焼成によって生まれる表情を生かした作品を制作。

田川舞 個展

  • 会期:2026年9月12日(土)〜9月26日(土)
  • 営業時間:13:00〜19:00
  • 会場:KURUTO( )
  • 住所:大阪府大阪市西区南堀江4丁目25-D-103
  • アクセス:Osaka Metro「ドーム前千代崎駅」より徒歩7分/JR大阪環状線「大正駅」より徒歩12分
  • 展示内容:焼締の器・花器の展示販売(器約120点、花器約30点を予定)
  • オンライン販売:会期初日はご来場の方を優先し、翌週以降にオンラインストアへの掲載を予定しています

※会期中の営業日・在廊日など、最新情報はKURUTO( )の公式SNSにてお知らせします。

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