【新連載】Think about KURU -KURUのビジョンとバリューを深掘りしてみました-第1回 KURUのビジョンに込められた思いとは?


2022年の1月、KURUが半期に一度メンバーに向けて開催している経営報告会にて、KURUの新たなビジョンが発表されました。
バリューはその後の2023年にビジョンに近づくための行動指針として制定されました。

VISION
あなたの場と想いをデザインの力で長く愛されるカタチにする

VALUE
1. 本質を捉える
2. チームでつくる
3. チャレンジし続ける
4. 熱中する
5. フェアに関わる

本連載では、KURUのVISION・VALUEについて深掘りし、KURUについて詳しく知っていただける機会にできればと思います。
第1回の今回は、弊社CEO水谷へ、ビジョンに込めた想いや考えについてインタビューしました。
ぜひお楽しみください。

目次
1. 会社として向かうべき方向性を明確にする
2. デザインの持つ力を活かすためにデザインを捉え直す
3. より広く、より長く場づくりに関わることによって生まれる価値
4. その場所の芯となる部分が変わらずに存在し続けること
5. 「本質を捉える」ことで新たな価値を生み出す
6. アウトプットの選択肢を増やすことで、長く愛されるカタチをつくる
7. 会社の仕組みをデザインする

会社として向かうべき方向性を明確にする

ービジョンを掲げるに至った経緯について教えてください。

先代からクルの代表を引き継ぎ、デザイナーではない私がアトリエ建築設計事務所に入ることになりました。
クルを不動産や企画、運営など様々な領域を横断し、「チームでつくる」体制へと変えていく中で、会社の目指す方向を明確に言語化する必要を強く感じ、ビジョンの策定に至りました。
当時、個人的なつながりや紹介から企画段階から関わるプロジェクトも少しずつ増え、その価値は見え始めていたものの、会社として向かうべき方向性に自信も実績もなく、どう人に伝えれば良いのか迷っていました。
社員と一緒にワークショップをして、会社のビジョンを決めることにもチャレンジしていたのですが、中々うまく言葉をまとめることができませんでした。

そんな中で、たまたま中川政七商店の中川政七(代表取締役会長)さんとお話しする機会があり、ビジネスとビジョンの両方の視点をもった中川さんにお願いすることで、私自身やクルをより客観的に見つめる機会になるのではないかと思い、協力をお願いすることにしました。
中川さんとは10時間以上、ビジョンだけでなく、ビジネスのところから壁打ちさせていただき、会社の指針となるビジョンを策定しました。

当時の水谷のメモ

デザインの持つ力を活かすために「デザイン」を捉え直す

ー先代より会社を受け継いでから設定したビジョンですが、設定する上で意識したことはありますか?

まず、私たちの会社は長年デザインに携わってきたので「デザイン」という言葉は絶対に外したくないと考えました。
私はデザイナーではありませんが、先代である父、水谷のデザインした場を訪れた際にデザインによって人が喜んでいる場面を多く目にし、デザインの持つ力を感じる機会は多くありました。
私がクルに関わるにあたり、デザインの力を最大化するためには、建築デザインだけでなく、ビジネスやブランドのデザインも含めた広い意味での「デザイン」として捉え直すことが必要であると感じました。また、クライアントさまのビジネスに覚悟を持って寄り添い、プロジェクトに必要なければ建物を建てないという提案ができる「フェアな関係性」を築くことも大切にしたいと思いました。

業務や業態を広げ、常にプロジェクトに応じたアウトプットを行うことは、クライアントさまから見て会社の価値がわかりにくく、社内のノウハウも貯めづらい、私たちのような小さい会社のやり方ではないことは理解していますが、それでもその方針を貫きたいと思っています。
これは、お客さんの想いに最良の提案を行うためであり、私自身がアウトプットを定型化することにワクワクしないからです。

これらの考えは、ビジョン策定ののちに作った、ビジョン実現のための行動指針であるバリューにも反映され、KURUにとって大切にしたいものとなりました。

より広く、より長く場づくりに関わることによって生まれる価値

ーなぜ「長く愛される」ことを大切にしたいと考えたのですか?

私は、クルの代表になる前は、不動産デベロッパーで働いていました。大学では建築を学んだものの、自分の設計の才能に限界を感じ、設計士にはなれないという気持ちから、場に関わるビジネスを学びたいと思い、デベロッパーに就職しました。
ただ、当時から多くのデベロッパーの画一的なものを大量につくるビジネスモデルには半信半疑でした。なぜそのような場づくりが行われているのか、ビジネスの仕組みを理解した上で、そうではないものを作りたいと思っていました。
不動産会社では、マンションの買取再販事業の立ち上げを任される機会がありました。当初は仕入れから企画、デザイン、販売まで1人で担当していました。
その当時、不動産のセオリーでは、マンションの買取再販はデザインにあまりお金を掛けず、安く買って安く作って相場に合わせた価格で売ることが主流でした。そんな中、あえてデザインに力を入れ、市場よりも高く販売したところ、結果としてお客様から高い評価を得、かつ高い利益を出した経験が、自信と新たな可能性を教えてくれました。仕入れから販売まで一貫して関わることで、他ではできない価値を作ることができるのではないかと感じました。

その経験から、場づくりには、企画、建築、販売を分担して大量に画一的なものを作るのではなく、最初から最後まで長く、広く関わり続けながら、その場所ならではのものを丁寧に作り上げるアプローチが必要だと感じました。そうした会社がもっと増えることで、人やまちがより豊かになると考えています。

その場所の芯となる部分が変わらずに存在し続けること

ー「長く愛されるカタチ」とは、具体的にどのようなものだと捉えていますか?

「長く愛されるカタチ」とは、何度も訪れたくなる場所や、多くの人が関わり続ける場所を指します。そこには、作り手の思いや情熱がしっかりと表現されていて、大事な人に勧めたくなるような場所です。企画からコンセプト、デザイン、ビジネスモデル、さらには店舗であればスタッフの雰囲気にまで一貫性があることが「長く愛されるカタチ」につながると考えています。

例えば瀬戸内芸術祭は、会期ごとに作品や運営スタッフが変わるにもかかわらず、大切にしたい考え方に一貫性があるため、訪れる人の期待値も変わらず、その期待を裏切られることもありません。それが多くの人の「また行きたい」を作っているのだと思います。

隠岐諸島のEntôに宿泊した際にも、同じことを感じました。「ないものはない」というコンセプトのもと、ただ流れる景色と時間を楽しむためにテレビもなく、アメニティもシンプル。豪華ではないが本当に豊かな経験ができました。特に心に残ったのは、運営のスタッフさんたちです。若くて、あまり田舎には居なさそうな方々が本当に楽しそうに働いており、聞けばIターンやUターンでこの施設のコンセプトに共感して、ここで働くためにやってきた人がほとんどとのことでした。
それを聞いて、本当に良い場だと感じました。

時代とともに変化することがあっても、その場所の芯となる部分は変わらずに存在し続けることが重要で、その芯が人を惹きつけ続けるのではないかと思っています。

その大切にしたい、届けたい芯の部分を伝えるために寄与するデザインの力はとても大きいと思います。

「本質を捉える」ことで新たな価値を生み出す

ー「長く愛されるカタチ」が特に実現できたと思うプロジェクトはありますか?

Kei no Umi WEDDING」です。

このプロジェクトは、クルがデザインの上流から関わりたいと考えるようになったきっかけのプロジェクトでもあります。当時、淡路島のホテルのオーナーから依頼されたのは、ホテルの内装のデザインでしたが、内装の状態はそれほど悪くなく、むしろより多くの人に訪れてもらうための新たな価値を生み出すことが必要であると考え、ホテルの内装の提案ではなく、ロケーションを活かしたウェディングチャペルを新しく建てる提案を行いました。「本質を捉える」提案を行ったことで、Kei no Umi WEDDINGでは、年間に50組以上の結婚式が行われる場所になり、結果的に施設全体の稼働率が向上しました。

新たな価値を生み出すために、企画段階から関わり「長く愛されるカタチ」を実現できたプロジェクトです。

アウトプットの選択肢を増やすことで、長く愛されるカタチをつくる

ー具体的なKURUのあるべき姿として理想像はありますか?

私は、デザイン会社が事業の企画から設計、運営まで関わりの幅を広げることで、世の中にもっと面白い場所をつくることができると考えています。

5年後、10年後の理想としては、構想から完成後まで長く関わるプロジェクトが増えて、自社で不動産や会社へ投資するなど「場と想いを長く愛されるカタチにする」ためにクルが取れる選択肢が増えている状態を目指しています。

案件に応じて、アプローチの仕方も、アウトプットも様々でありながらも、私たちが関わる場所は常に、人に愛される仕掛けがあり、経済的にも成立し、かつそれを達成するための本質的で美しいデザインがであるべきだと考えています。
将来的には、「何か面白い場所をつくりたいな」と思った時に、「まずはクルに相談しよう」と自然と思ってもらえるような存在でありたいですね。

会社の仕組みをデザインする

ー理想像に近づくために、日々の業務やプロジェクトで特に大切にしていることはありますか?

私たちが日々の業務やプロジェクトに関わらせていただく際に大切にしているのは、まずクライアントさま自身に強い「想い」があるかどうかです。お金だけを重視する方とのプロジェクトは、他の会社の方が適切な提案ができると考え、お断りしています。
また今は、KURUという会社の仕組みをデザインすることが、重要な私の役割だと思っています。プロジェクトの幅も広がり、多様な関わり方を求められることが増えてきた中で私だけでできることは多くないため、多様なメンバーを受け入れ、そのポテンシャルを引き出すことが、会社のパワーを最大化できる方法だと考えています。
さらに、目指している未来を常に発信し、その未来に必要な情報や人との出会いを積極的に作ることも心がけています。

クライアントさまや仲間とともに、「想い」を大切にしながら、KURUだからこそできる価値を創造していきたいと考えています。

KURUは、「あなたの場と想いをデザインの力で長く愛されるカタチにする」というビジョンを掲げ、建築デザインだけでないビジネスやブランドのデザインも含めた広い意味でのデザインを行い、時間をかけて大切にされる場をつくることを目指しています。

次回は、ビジョンを達成するための具体的な行動指針であるバリューについて、深掘りします。ぜひご覧ください!

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