この記事はこんな方におすすめです!
・シェアオフィス事業に興味のある方
・お持ちのビルの空室活用をしたい方
・空き物件の収益化についてヒントを得たい方
・複数の会社が関わるプロジェクトを成功させたい方
・その他、場の活用についてチャレンジしたい方
(所要時間5分)
KURUは、建築デザインのスペシャリストでありながら、業界や分野の壁に捉われることなく、
プロジェクト単位で最適なアイディアとスペシャリストを組み合わせることを得意としています。
ケーススタディ第2回目の今回は、
KURUが「場の活用にお困りの企業」と「場に関わる新しいチャレンジをしたい企業」をマッチングさせ、空き物件の収益化に成功したお話です。
「場」についての相談からはじまる
「築50年、4階建てで屋上付きのビルの、2階から4階まで空室になった。どうにか活用したいが、どうすればよいか分からない。」
あるときKURUにこんな相談が寄せられました。
その物件があるのは大阪市内「谷町六丁目駅」から徒歩1分の場所。
ここは大阪の人々に「谷六(たにろく)」の愛称で親しまれ、大阪市中央区にありながら昔ながらの家屋も残る落ち着いた町です。
時を同じくして別の企業からはもう一つの相談が。
「今行っている不動産事業にさらに勢いをつけるために、具体的なアイディアはないが場所に関わる新しいチャレンジをしたい。」
都心部へのアクセスも良い好条件の物件を持つ一方で、活用方法が分からない企業と、既存事業をさらに伸ばすべく不動産の拡大領域に新たな投資をしたい企業。
もし両者が納得するような「場」についての企画を提案できれば、二者は手を組むことができるのではないかとKURUは考えました。
「そこにしかない」を見つけ、アイディアを深める
KURUが企画を提案する上で重視したことは3つ。
・両者にとって魅力的な活用アイディアを見つけること
・現実的な収支が合うこと
・長く愛される場所だからこそ「そこにしかない」ものを発見すること
言い換えると、その場所でしたいこと「Will」・その場所でできること「Can」・その場所ですべきこと「Must」を実現することです。
今回のケースではまず、「Will」、つまり両者にとって「その場でしたいこと」から考えていきました。
さまざまな議論がある中で特に感触の良かった、「シェアオフィス」としての活用アイディアを軸に進めていくことになります。
そして、「その場所ですべき」と納得できる事業を見つける上で、最も大切なことは「そこにしかない」ものを発見すること。
なぜその場が存在するのか?なぜその場が必要なのか?と問い、本質を捉えていくことは、KURUが大切にしているバリューでもあります。
そこで、「そこにしかない」を発見するために、実際に何度も物件に足を運び土地の「現在」を理解しながら、
「過去」を調べることで「未来」へ繋ぐべき土地の個性を読み解く作業が始まりました。
そこからこんなことが分かってきました。
谷町六丁目は…
・物件が位置する場所は大阪大空襲の被害を免れた地域であり、古い建物も大切にされ残っている
・一方で、新たに手を加えられてできたお店もうまくまちと調和している
・単なる消費的な生活ではなく「暮らし」を大切に生きている人が集うまちである
そうした調査から、「暮らすように働く」をコンセプトにしたシェアオフィスにすべきではないかという議論になりました。
具体的には、個別に貸し出すスペースがあるだけではなく、利用者が自由に使えるリビングとキッチンスペースを設け、
自然な交流が生み出されるような「場」となるシェアオフィスをイメージしました。
そのまちのお店で自然に生まれる交流が、ここでも同じように生まれることをイメージすることで、納得度の高い「その場所ですべき」ことが見えてきました。
無理のない経営判断をするために
そしてもちろん、最終的な判断をするためには、現実的な収支について検討を深める必要があります。
実際にKURUが主導して行ったことは、シェアオフィス市場の調査と、リソースとコストを最適化した事業モデルの提案です。
市場調査については、市場規模の計算など数字としてみるだけではなく、約30箇所のシェアオフィスに足を運んで現地調査を行い、
フロアの状況や、運営の体制など、あらゆる側面から成功するシェアオフィスについての情報を集めました。
さらに、今回は人的リソースが限られている中での運営が前提であったため、前述の調査内容も踏まえて事業モデルを組み立てました。
フロアの区分けがシェアオフィスの事業モデルに大きく影響することが分かり、今回はリソースとコストに見合った無理のない判断をし、
複数の小規模オフィスを設ける計画となりました。
フロアの区分け | メリット | デメリット |
---|---|---|
コワーキング | ・多くの利用者を見込める。 ・フリーランスの方も利用しやすくなる。 | ・利用者の管理に人的リソースが一定必要。 |
複数の小規模オフィス | ・利用者の管理コストを下げられる。 ・回転率が上がり中期的に賃上げを見込むことができる。 | ・価格設定によっては顧客が獲得できない可能性もある。 |
大規模オフィス | ・中長期的に顧客獲得ができる。 | ・回転率が下がり、賃上げが難しい。 |
こうした提案の中でKURUが大切にしたことは、「無理のない経営判断を下すことができる」ような情報を集めて提案することです。
「無理のない」というのは、短期的に「頑張れば(ヒトや資金のリソースを無理してかければ)上手くいきそう」という視点ではなく、中長期的な視点で考えるということです。
事業を長くつづけていくことができ、かつ最もその場にふさわしい事業モデルを一緒に考えていくことこそが、重要であると感じています。
二者の想いをかたちにした企画案に、みんなで合意をした上で、KURUが大切にしたいことにも強く共感いただき、
「場」に関わるチャレンジを一緒に実現しようと、話が進んだことはとても喜ばしいことでした。
大阪の人々に愛される『谷六(たにろく)』に新しいシェアオフィスを
方向性が定まり、いよいよリノベーションデザインが始まりました。
実際に、完成したシェアオフィスはこちら!
まずは外観から。
エントランスアプローチはシャッターを取り払い、開放的かつ明るい印象に。
そして間取りはこちら。
それぞれの個室スペースを仕切るのは透明のガラスパーティション。
コストを最小限に抑えるため、一般に流通されている柱材を利用して造作しました。
このガラスパーティションがあることで、プライベートな空間を確保しつつも、利用者同士のコミュニケーションを誘発する仕組みづくりをしました。
一番広いスペースでも17㎡程であったため、開放感を与えるという目的もありました。
この物件のコンセプトである「暮らすように働く」を特に体現した場所が、4階にある共有スペース。
自由に利用できるリビングとキッチンを設置することで、オフィスでありながらもアットホームな雰囲気のある空間となりました。
老朽化したビルであったため、補修等が必要な部分は複数あり、
作成した事業収支から割り出される予算でバランスを取りながらやりくりするなど、もちろん想定外の苦労はありました。
そのような中でも、可能な限りそのまま使える部分は生かし、家具や建具も比較的安価なものを選択することで、
少ない投資で、収益化することを実現しました。
こうして誕生したシェアオフィスは、
谷町六丁目の「6」と、LIVING+OFFICE+KITCHENという間取りの頭文字の「L・O・K」をかけ合わせ「LOK(ロク)」と名付けられました。
竣工後の運営こそ最重要。利用者の募集にも工夫を凝らす!
「暮らすように働く」をコンセプトに、事業としても勝算のあるシェアオフィスを作ったら終わり!ではありません。
竣工後の運営こそ最重要。今回KURUは運営のサポートもさせていただきました。
コンセプトを丁寧に作ったこともあり、利用者の募集にもちょっとした工夫を凝らす必要がありました。
そこで、株式会社アートアンドクラフトが運営する「大阪R不動産」さんと連携し、一般的な物件紹介サイトと異なる魅力的なPRを実施しました。
その結果、完成から3ヶ月で10室中、7室への入居が決まり、半年で全室が満室となりました。
実際に利用されていた企業の方は、まちに合ったおしゃれさや居心地の良さに加え、複合機など基本的な設備が整っており、
初期費用が抑えられるという点が入居の決め手となったとのこと。
また4階の共有スペースでは昼食時やイベント時に他の利用者の方々とも交流もあったとのことです。
プロジェクトを振り返って
初めて、企業同士のマッチング、企画、デザイン、運営までサポートさせていただいた今回のプロジェクト。
今のKURUのカタチを作り上げた思い入れのあるプロジェクトです。
KURUとしても学ばせていただいたことが多くあり、このプロジェクトを機に正式に企画チームを発足。
設計チーム、企画チーム、各々が知識を持ちよりながら場のビジネスを共に作り上げる建築設計事務所として、日々邁進しています!
「場の活用に困っている」
「具体的なアイディアはないが場に関わる新しいチャレンジをしたい」
「複数の会社が関わるプロジェクトを成功させたい」
ちょっとしたお悩み相談でも差し支えありません。
是非一度私たちとお話してみませんか?
※お問合せはこちらのフォームよりお寄せください。
※シェアオフィス「LOK」は、不動産事業、レストラン運営事業、投資事業などを手掛ける株式会社リーベンバーグが運営されています。
当時、CEO水谷が板倉社長より相談を受け、マッチング、サポートをさせていただきました。
現在では料理人を支援するプロジェクトとして、京都にある「IDO KYOTO」も運営されています。
今回ご紹介したプロジェクトを機に、KURUが設計デザインを担当させていただきました。
是非、足を運んでみてください!
株式会社リーベンバーグ公式HP:https://lebenberg.net/
IDO KYOTO:https://ido-kyoto.com/
※「大阪R不動産」を運営されている株式会社アートアンドクラフト現代表取締役社長西川様とは、オンライントークイベント『KURU JAM』で対談させていただきました。
是非、こちらも合わせてご覧ください!
本編(動画):https://www.youtube.com/watch?v=4L25N00Lrk4&t=4s
”読む”KURU JAM:https://kuru.co.jp/journal/6110/
※実際にLOKに入居され、今回お話を聞かせてくださった株式会社キテレツ様、ありがとうございました!
株式会社キテレツHP:https://kiteretz.com/about/